アポロ計画捏造説#53 月面からの発射について

アポロ計画捏造説#52 では、WikipediaのExtravehicular activity(船外活動)を訳してみました。

次に、月着陸船が月面からの発射して、月上空を周回する司令船と合流し、ドッキングすることについて検討してみたいと思います。

月着陸船は下降段と上昇段に分かれています。
着陸時は下降段を使って着陸し、発射時は下降段を切り離して上昇段のみで飛び立ちます。

したがって上昇段のスペックから考察します。

月着陸船上昇段
総重量:  4,670kg
本体重量:  2,150kg
船内大気:  酸素100%、33kPa(1/3気圧)

上昇推進系ロケット
推進質量:  2,353 kg
推力:  15.6kN
推進剤:  (四酸化二窒素 - 酸化剤 / エアロジン-50 - 燃料)×1個
比推力:  311 s (3,050 N·s/kg)
※姿勢制御用ロケット(RCS)も月着陸船上昇段に設置されているのですが、ここでは考慮しません。

用語について確認します。

推力
移動する物体(ここでいう宇宙船)を進行方向に推し進める力のこと。
推進装置によって流体を後方へ加速することで、その反作用を利用し発生する(一般に、後方へ向けて、前進速度以上に加速する)。
単位はN(ニュートン)。1キログラムの質量をもつ物体に1メートル毎秒毎秒 (m/s2) の加速度を生じさせる力。

比推力
燃料効率。定義は「推力/(推進剤流量・重力加速度)」で、単位は秒。
単位重量の推進剤で単位推力を発生させ続けられる秒数。
ロケットエンジン/燃料で決まる定数となっており、液体燃料ロケットがおよそ 300–460 秒。


月を飛び立った月着陸船上昇段は月を周回するアポロ司令船と合流し、ドッキングしました。

アポロ司令船
アポロ司令船が月を周回している状況について考察します。
正確な資料(データ)がないために一部考察で補います。

アポロ司令船は第一宇宙速度以上、第二宇宙速度未満で月を周回しています。
したがって、1.7km/s以上、2.4km/s未満ということになります。
(※アポロ計画捏造説#34 月への軌道や宇宙速度のこと 参照)
この速度は地表を前提として算出しているので、高度が上がると若干遅くなります。

月を周回する際の高度については、地表すれすれでも速度さえ満たせば周回することは可能という事実があります。
一番信頼できるデータは アポロ計画捏造説#37-Apollo 17 の月上昇のコンピュータ・シミュレーション にあり、アポロ17号は実際に高度およそ18,520mでドッキングをしました。

このときアポロ17号の司令船は楕円軌道をしていて、遠点が約90km、近点が17kmの楕円でした。
また、このときの司令船の速度は1,687m/sでした。


月周回状況
月の直径は 3,474 km です。
高度18,520m でドッキングしたので、月着陸船は最低でも直径3,492km(3474km+18km)の円軌道をする必要があります。
司令船の速度 1,687m/s (=1.687km/s)で考えると、月着陸船も同様の速度になっています。
単純な考察のため、月着陸船がきれいな円軌道だったと仮定します。
そうすると、3492km × 3.14 (円周率)/ 1.687 km/s =6,499(1周にかかる秒数)
より、月着陸船は月を1.8時間に1周していた計算になります。


月着陸船のロケット推進力
上昇推進系ロケットで飛び立ちます。

上昇推進系ロケットのスペックはこのようになっています。
推進質量:  2,353 kg
推力:  15.6kN
比推力:  311 s (3,050 N·s/kg)

比推力が分かりにくいので、読み替えると、下記の説明になります。
2353 kg × 9.8 m/s^2 の推力を生じさせる燃料の流量では、2353 kg の燃料で 311 秒間その推力を得られる。

つまり重力 1/6 の月面上ではこのようになります。
2353 kg × 1.63 m/s^2 の推力を生じさせる燃料の流量では、2353 kg の燃料で 1866 秒間その推力を得られる。

この条件から推力(燃料の流量)を(2353×1.63 N (=3853N)から)15600Nに変えて、その時の秒数を割り出しなおします。

15600N / 3853N = 4.05 (倍)
つまり、ベース値(月の重力加速度)の 4.05 倍の推力(燃料の流量)を出し続けることになり、1866s / 4.05 = 460s の間、月で噴射できることになります。

460秒間噴射して上昇します。
今度は月着陸船の重さも考慮してたどり着ける高度を算出します。
ただし、燃料が減ることを考慮しません。燃料満タンの重さのまま、上昇します。


燃料満タンのケース パラメータを見直します。
重力加速度: 1.63 m/s^2
上昇エネルギー: 15600N (kg・m/sec^2)
総重量:  4,670kg

上昇加速度 = 上昇エネルギー / 総重量  = 15600(kg・m/sec^2) / 4,670(kg) 
= 3.34 m/sec^2

月面上での実際の上昇加速度 = 上昇加速度-重力加速度 = 3.34 - 1.63
= 1.71 m/sec^2

つまり、一定の推力でジェット噴射して上昇するならば、月面上では 1.71 m/sec^2 の加速度が得られます。

初速度0、加速度 1.71 m/sec^2 で 時間は 460 秒間噴射します。

速度= a × t (a:加速度、t:時間)
=1.71 × 460 = 786.6 m/s

移動距離= 1/2 × a × t^2 (a:加速度、t:時間)
= 1/2 × 1.71 × 460^2 = 182,494 m = 180.9 km

月面上では 181km 上昇でき、その時の速度は垂直方向に 786.6 m/s となる。が回答になりました。


次に月着陸船の重さは考慮するが、燃料が空っぽで飛び立った場合を計算します。
今回も燃料が減ることを考慮しません。

燃料空っぽのケース パラメータを見直します。
重力加速度: 1.63 m/s^2
上昇エネルギー: 15600N (kg・m/sec^2)
総重量:  2,317kg

上昇加速度 = 上昇エネルギー / 総重量  = 15600(kg・m/sec^2) / 2,317(kg) 
= 6.73 m/sec^2

月面上での実際の上昇加速度 = 上昇加速度-重力加速度 = 6.73 - 1.63
= 5.10 m/sec^2

つまり、一定の推力でジェット噴射して上昇するならば、月面上では 5.10 m/sec^2 の加速度が得られます。

初速度0、加速度 5.10 m/sec^2 で 時間は 460 秒間噴射します。

速度= a × t (a:加速度、t:時間)
=5.10 × 460 = 2,346 m/s

移動距離= 1/2 × a × t^2 (a:加速度、t:時間)
= 1/2 × 5.10 × 460^2 = 539,580 m = 539.6 km

月面上では 540km 上昇でき、その時の速度は垂直方向に 2,346 m/s となる。が回答になりました。


今度は燃料が満タンで飛び立ち、460秒後には空っぽになる場合を計算します。
燃料は等速で消費されるものとします。

燃料が減っていくケース パラメータを見直します。
重力加速度: 1.63 m/s^2
上昇エネルギー: 15600N (kg・m/sec^2)
重量(発射時):  4,670kg
重量(460秒後):  2,317kg

時刻 t (0 <= t <= 460) における重量は以下の式で表せられます。
重量 = 4,670 - 2353/460 × t

時刻 t における上昇加速度は
上昇加速度 = 上昇エネルギー / 重量 = 15600 / (4,670 - 2353/460 × t)

時刻 t における月面上での実際の上昇加速度 = 上昇加速度-重力加速度
= 15600 / (4,670 - 2353/460 × t) - 1.63
= 15600 / (4,670 - 5.12 × t) - 1.63

加速度は「速度の単位時間あたりの変化量」なので、加速度を時間 t で積分すれば速度が得られます。

速度(v) = (0, 460) {15600 / (4,670 - 5.12 × t) - 1.63}  dt

-b / (a-bt) の積分は ln(a-bt) であるから、
※In は自然対数を表し、ln(x)=Log(e) x

= [- (15600 / 5.12) × ln(4670 - 5.12 t) - 1.63 t](0, 460)
= [- 3047 × ln (4670 - 5.12 t) - 1.63 t](0, 460)
= {- 3047 × ln (4670 - 5.12 × 460) - 1.63 × 460} - {- 3047 × ln (4670 - 5.12 × 0) - 1.63 × 0}
= {- 3047 × ln (2314.8) - 749.8} - {- 3047 × ln (4670)}

ln (2314.8)=7.74、ln (4670)=8.45 を代入します。

= {- 3047 × (7.74) - 749.8} - {- 3047 × (8.45)}
= {-23583.8 - 749.8} + {25747.2}
= 1,413.6 m/s

速度は「距離の単位時間あたりの変化量」なので、速度を時間 t で積分すれば距離が得られます。

ここで速度は上記の積分方程式の原始関数で表せるので、
v(t) = - 3047 × ln (4670 - 5.12 t) - 1.63 t + C (Cは積分定数)
となります。

初速度 0、つまり v(0) = 0 より 積分定数 C を下記のようにして算出できます。
v(0) = - 3047 × ln (4670 - 5.12 × 0) - 1.63 × 0 + C
= - 3047 × ln (4670) + C
= - 3047 × 8.45 + C
= - 25747 + C
= 0
よって、C = 25747

時刻 t における速度v(t) = - 3047 × ln (4670 - 5.12 t) - 1.63 t + 25747

距離(d) = (0, 460) {- 3047 × ln (4670 - 5.12 t) - 1.63 t + 25747}dt

w = 4670 - 5.12 t と変数変換します。

このとき、次の3つが成り立ちます。
t = 912.1 - w / 5.12
dt = (- 1 / 5.12) dw
t : 0 -> 460 のとき、w : 4670 -> 2315

距離(d) = (4670, 2315) {- 3047 × ln (w) - 1.63 (912.1 - w / 5.12) + 25747} × (- 1 / 5.12) dw
= (4670, 2315) {(- 3047 / - 5.12) × ln (w) - (1.63 / - 5.12)(912.1 - w / 5.12) + (25747 / - 5.12)}dw
= (4670, 2315) {(595.1) × ln (w) + 290.4 - 0.062179 w - 5029} dw
= (4670, 2315) {595.1 ln (w) - 0.062179 w - 4738.6} dw

ln (w) の積分は w(ln (w) - 1) であるから、
※In は自然対数を表し、ln(x)=Log(e) x

= [595.1 × w(ln (w) - 1) - (0.062179 / 2)×w^2 - 4738.6×w](4670, 2315)

= {595.1 × 2315(ln (2315) - 1) - (0.062179 / 2)× (2315)^2 - 4738.6×2315} 
- {595.1 × 4670(ln (4670) - 1) - (0.062179 / 2)× (4670)^2 - 4738.6×4670}

ln (2315)=7.74、ln (4670)=8.45 を代入します。

= {595.1 × 2315(7.74 - 1) - (0.062179 / 2)× (2315)^2 - 4738.6×2315}
- {595.1 × 4670(8.45 - 1) - (0.062179 / 2)× (4670)^2 - 4738.6×4670}

下記の式を計算機にかけます。(具体的にはExcelに貼り付けて計算させます。)
=(595.1*2315*(7.74-1)-(0.062179/2)*(2315)*(2315)-4738.6*2315)-(595.1*4670*(8.45-1)-(0.062179/2)*(4670)*(4670)-4738.6*4670)

=251798.3 m = 252 km

月面上では 252km 上昇でき、その時の速度は垂直方向に 1,413.6 m/s となる。が回答になりました。


この段階で分かること
月面を飛び立った月着陸船は、460 秒の噴射で司令船の高度(およそ18,520m)まで問題なく上昇することができます。
司令船の速度は水平方向に1,687m/sであり、月着陸船は途中で角度を変えてほとんどの推力を水平方向の加速に利用すれば、この速度にたどり着くことはできそうです。(ややこしいので計算は省きます。)


ドッキングまでの時間
月着陸船が月を離陸してから司令船にドッキングするまでの時間は公表されています。

Apollo 11 -- 3:40:59
Apollo 12 -- 3:32:32
Apollo 14 -- 1:47:11
Apollo 15 -- 1:59:03
Apollo 16 -- 2:09:30
Apollo 17 -- 2:15:38

月着陸船は月面を飛び立った後、460秒で噴射を終え、月周回軌道に入ります。
月着陸船は月を1.8時間に1周する速度(マッハ4.9)に達していました。
このとき、月着陸船は、追加の推力を発生させる燃料をもう持っていません。

つまり、合流するために宇宙船を操縦することができません。

月面を発射した月着陸船が、月上空を周回している司令船に、1~3時間かけて合流してドッキングするためには、月着陸船を操縦することが絶対に必須です。

操縦ができないため、合流してドッキングすることは不可能です。


アポロ計画捏造説#54 につづく

参考URL
https://ja.wikipedia.org/wiki/アポロ月着陸船
https://en.wikipedia.org/wiki/Apollo_Lunar_Module
https://ja.wikipedia.org/wiki/推力
https://ja.wikipedia.org/wiki/比推力
Lunar Module Ascent Simulation

16 件のコメント:

  1. サム
    サッスガー
    >※読みやすさを重視した数学の答案の記述は得意なんです。
    フムフム・・・
    なかなかです・・・
    これから、みてみます。

    返信削除
  2. サム
    ーーーーーーーーーーーーーーーーー
    月着陸船は月面を飛び立った後、460秒で噴射を終え、月周回軌道に入ります。
    月着陸船は月を1.8時間に1周する速度(マッハ4.9)に達していました。
    このとき、月着陸船は、追加の推力を発生させる燃料をもう持っていません。

    つまり、合流するために宇宙船を操縦することができません。

    月面を発射した月着陸船が、月上空を周回している司令船に、1~3時間かけて合流してドッキングするためには、月着陸船を操縦することが絶対に必須です。

    操縦ができないため、合流してドッキングすることは不可能です。
    ーーーーーーーーーーーーーー
    その通りです!!!

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    返信
    1. サム
      わいあんです。
      ありがとうございます。
      このページも疑惑情報として既に資料集(捏造疑惑をまとめたページ)にまとめてあります。
      疑惑情報もたくさんそろってうれしいです。
      では。
      わいあん

      削除
  3. サム
    うーーーん・・・
    積分記号が迫力ないねぇーー
    もっと大きくできるといいんだけんど・・・
    無理だよね。

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    返信
    1. サム
      わいあんです。
      積分記号のフォントとサイズを変更しました。
      これでどうでしょうか?
      わいあん

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    2. サム
      フム・・・
      ぐっと、迫力出てきた・・・

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  4. サム
    とにかくおもしろかった・・・
    こんな機会でもないと、やることない・・・

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    返信
    1. サム
      わいあんです。
      今回の記事が作成できたのはサムのおかげです。
      特に燃料が減りながら飛行する際の速度・距離の計算は私にはまったく分からなかったです。
      ありがとうございました。
      わいあん

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    2. サム
      こういうことをやる人は少ない。
      へ理屈ばかりで・・・
      これだけやると、かなり勉強になるものだ。
      得るものは大きい

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    3. サム
      わいあんです。
      サムは生粋のエンジニア気質ですね。
      わいあん

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    4. サム
      ヒッヒッヒーーー

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  5. サム
    反対意見も無視してはだめだぞ!!!

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    返信
    1. サム
      わいあんです。
      このブログは私のブログです。
      私にはコメントをどうするかを決める権利があり、私が不要と判断したものは削除します。
      なお、反対意見だから削除したのではありません。
      「信用できない相手」と感じたので削除しました。
      わいあん

      削除
    2. サム
      了解

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  6. 軌道船の方が最終調整したって思考に行きついてください

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  7. 自分でちゃんと計算してるのは偉いと思うけど

    着陸船の上昇段には、メインエンジンとは別に姿勢制御用の小型エンジンが別についてるんじゃね?

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